第3回 交趾阿古陀香合(こうち あこだこうごう)
交趾焼は中国南部で明代に焼かれた軟質陶器で緑、黄、紫などの色を主調とする鉛釉で彩られる。交趾とは現在のベトナム南部をさし、この地方と日本を往来する貿易船で運ばれたことからこの名が付けられたとされる。型を用いて成形されたいわゆる型物香合で、これは器形が阿古陀瓜に似ていることから阿古陀香合と呼ばれる。器の大きさから大中小に分けられ、また同種のものに角阿古陀捻(ひねり)阿古陀がある。
この香合は捻阿古陀形でつややかな緑釉の発色もよく、蓋は金箔をはった上に透明度のある朱漆をかけ、透き漆を通して下の金箔が輝くいわゆる白檀塗(びゃくだんぬり)が施されている。
香合は練香や木香を入れる蓋付の器で、茶道の炭点前の折に席中で香を焚いた後に拝見の対象となり、炭点前が省略される時は床などに飾ることもある。特に色鮮やかで様々な意匠を持つ交趾の型物香合は、その愛らしさから多くの茶人に愛玩された。
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